いつかは行ってみたいお店

半年くらいまえのことですが、
一人でランチを食べていたとき、
いい話が聞こえてきました。

そこはカウンターしかない、
オープンしてまだ日が浅いお店。

そのお店の料理をつくる方と、
別の飲食店を営む、初めて食べに来たらしい男性が
近辺の飲食店事情について、
カウンター越しに
世間話をしていました。


そうすると、近所にある老舗の割烹
『京味』のご主人である西さんの話に。


ランチのお店の方が
「あの方は、すごいですよ。
 近くで、足元にも及ばないお店をやらせてもらってますが、
 勉強になります」


彼がいうには、あの料理の漫画
“『美味しんぼ』の世界の人”である西さんは、
偉くなると、だんだん料理を人に任せてしまう人が多い中、
「ちゃんと料理をつくって、
 ゴミ出しまでしちゃいますからねえ」と。


その姿をみた彼は、その時、西さんに思わず
「えっ、西さんでもゴミ出しするんですか??」
と、言うと西さんは
「いやぁ、ゴミ出し係長だからねぇ」と、
おっしゃったのだとか。


さらに、別の日。
その新しいお店の人が、
お客さんがこないから、ちょっと先のところで、
お店のビラを配っていると、
西さんが自転車で通りかかって
「どうしたんですか?」
と聞いたら、


「いやぁ、俺がちょっといないときに店のもんが
 お客さんを返しちゃって。
 あいさつしなきゃっって自転車で追いかけに来たんだけど
 わかんなかったよ」


と、おっしゃったのだとか。


私は、
「ほほぅ、さすが西さん。すごい」
と、心の中で反応しながら
お二人の会話を勝手に聞いてました。
(そもそもカウンターしかないお店で、
 ピーク時を過ぎているから、聞こえてきてしまう)


我が家には、うわさ(?)の西さんの本、
『日本のおかず』(京味 西健一郎)という料理本があります。


この本は、お店の懐石料理のレシピではなく、
西さんが子どものころに食べたおかずが中心のレシピ本。


おだしの取り方から、和え物や煮物などついて
お料理の基本的なこと、
忘れたくない“お料理に対する気持ち”みたいなことが、
やさしくていねいに書かれています。


1年くらい前に購入し、
とくに夫が、この本とても気に入って、
それから、彼がお味噌汁をつくるときは
一層ていねいにだしをとるようになりました。


なので、我が家にとっては「あの本の、あの西さん」。


先の、お二人の会話を聞いていた私は、
(いわゆる「ぬすみ聞き」? ごめんなさい!!)


“実るほど頭をたれる稲穂かな”


という言葉が浮かんだことを覚えています。
いい話を聞いていると、
京味の西さんも、お店の人も好きになっちゃいますね。
(ちなみにカウンターだけのお店は、
もうランチをやっていないようです)


いつかは『京味』、行ってみたいなぁ。

(ネットで西さんを検索していたら、
NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」に出演してらしたんですね!
さすが。
こういうときは、テレビが恋しくなってしまいます……)


【今日の1%】


決しておごらず、基本を忘れるべからず。